歯みがきと鼻呼吸で健康力アップ

2020年11月01日

利根歯科診療所
歯科医長  飯島 康弘

新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響によりマスクやこまめな手洗いが予防として推奨されていますが、ウイルスに負けないよう自身の免疫力を高めることも重要です。口と鼻を健やかな状態に保つことで体の免疫力を向上させましょう。

歯みがきの目的

日常の習慣になっている歯みがきですが、なぜ私たちは歯を磨くのでしょうか。歯みがきの最大の目的は歯垢の除去です。歯垢は生きた細菌の塊です。歯の表面に付着しているため口をすすぐだけでは取り除くことができないため、歯みがきが必要です。
また、起きている間は常に出ている唾液の力である程度守られていますが、寝ている間は唾液がほとんど出ないので、朝起きた時は最も細菌が増えた状態です。就寝前の歯磨きも大切ですが、朝一番の歯みがきで口の中の細菌をできるだけ取り除くことも大切です。

治療や口腔ケアで感染リスクを減らす

ところで歯科医院で治療や口腔ケアを受けることによって、感染症リスクは大きく減るのだということも知っていただきたいと思います。例えばインフルエンザなどのウイルス性疾患も、丁寧な口腔ケアによって感染リスクを減らせるといわれています。
ほとんどの人の口の中には歯周病菌が棲みついています。この菌が歯周病の原因となるのはもちろんですが、これらの歯周病菌は、インフルエンザウイルスが体内に侵入するのを手助けする酵素を出すことがわかっています。よって口腔内の衛生状態が悪い人は、インフルエンザにかかりやすくなるのです。反対に歯科医院で口腔ケアをきちんと受けて歯周病菌を減らせば、感染リスクを小さくできます。
事実、在宅療養高齢者190人を対象にしたインフルエンザ発症率の調査で、歯科衛生士による口腔ケアを受けた人(98人)と受けなかった人(92人)との間で、口腔ケア介入群で1人が発症したのに対し、受けなかった群での発症者は9人で、口腔ケアによって発症率が約10倍も違ったといいます(図1:日本歯科医学会誌25号)。新型コロナウイルスにまで効果が及ぶのかはわかりませんが、口腔内を清潔にして細菌数を減らすことが、まずは誤嚥(ごえん)性肺炎、インフルエンザなどのウイルス性疾患の予防につながるのは間違いないでしょう。

図1
図1

鼻呼吸でウイルスを防ぐ

歯みがきに続いて大切なのが鼻呼吸です。先ほども述べましたが、寝ている間は唾液がほとんど出ないので口や喉は乾燥しています。口が開いていると乾燥した空気が直接喉の奥まで入るのでウイルスなどの感染症のリスクが高まります。ところが鼻呼吸にはウイルスを防ぐ様々な関門(図2)があります。
第一の関門は鼻毛。まずここでウイルスを含むやや大きめの埃や塵がブロックされます。第二は鼻の中からでる粘液です。ウイルスがこのネバネバにからめ捕られると、鼻から喉の奥にかけて生えた無数の線毛がベルトコンベヤーのように動き痰などで体外に排出されたり、胃に運ばれて胃酸で無害化されたりします。
第三にどんなに乾いた冷たい空気を吸い込んでも、鼻の中に縦横無尽に張り巡らされた毛細血管によって喉の奥では体温近くまで湿度が上昇し、湿度が80~85%に。このため乾燥に強く湿気に弱いウイルスの生存率が低下します。鼻と口では大きな違いがあるのです。

図2
図2

舌の筋肉を鍛える「あいうべ体操」

なかには鼻呼吸が苦手な人もいます。マスクを着けた息苦しさのせいで、マスクの下で口呼吸をしないよう注意が必要です。口呼吸をしている人の特徴は当然口がポカンと開いている人ですが、口を閉じていても舌が下の前歯の裏側にある人、いわば舌が寝たきりの状態の人も口呼吸をしている可能性が高いです。そこで「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口と舌を動かす「あいうべ体操(図3)」をやれば舌の筋肉が鍛えられ舌先が上顎に付き、自然と鼻で呼吸できるよう体質改善につながります。
これを機に皆さんも生活習慣を見直し、朝晩の歯磨きと鼻呼吸で健康力アップを目指しましょう。

図3

図3(※画像をクリックするとあいうべ体操のパンフレットを開きます。)

利根歯科診療所のとりくみ

当院ではいつも行っている衛生管理、たとえば器具の消毒、滅菌等に加え、いろいろなコロナ対策を行っており、患者様が安心してかかれるようにしております。
口の中の定期管理は、全身状態にも関係しますのでご心配があればご相談ください。

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