冬期にふえる呼吸器の感染症

2016年11月01日

利根中央病院 副院長(内科部長)
吉見 誠至

これから寒くなってくると呼吸器の感染症がふえます。なかでも注意しなければいけないのがインフルエンザです。日頃から感染を予防する注意が大事です。

呼吸器

図1

呼吸器は大きく3つに分かれます。鼻腔~咽頭~喉頭までを上気道、気管~気管支~細気管支までを下気道とよび、その先にあるのが肺です(図1)。気道は空気の通り道ですが、吸い込んだ空気を加温・加湿することに加えて、病原微生物を含む異物をからだの外に排出するという防御の働きをしています。防御機能が落ちていると感染症にかかりやすくなります。

冬期にウイルス感染症がふえる理由

1)ウイルスが好む低温・乾燥
空気が乾燥する冬期にはウイルスの水分が蒸発して軽くなるために、空気中にウイルスが浮遊しやすくなり、そのために感染しやすくなります。また低温・低湿度下ではウイルスが体外でより長く安定して生き延びることができます。
2)人の免疫力低下
からだが冷えると免疫を担当する細胞の働きが低下します。また空気の乾燥により、のど・鼻腔の粘膜が乾いた状態になると、粘膜が傷んでウイルスが体内に侵入しやすくなります。

かぜ症候群

かぜ症候群(いわゆる「かぜ」)は、主にウイルスによって引き起こされる上気道の感染症です。症状は咽頭痛、鼻水、咳、発熱です。健常な人なら通常は数日で軽快します。治療は安静、保湿、対症療法です。基礎に呼吸器や心臓の病気があると、かぜを引きがねに元の病気が悪化することがあります。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスにより引き起こされます。症状は発熱(通常は38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現れ、咳、鼻汁はこれに続いてでます。全身症状が強いのが、かぜと異なるところです。上気道から下気道に感染がおよぶと気管支炎や肺炎を起こしやすくなります。潜伏期間は1~3日間と短いです。
ウイルスの感染力が非常に強いので集団感染を起こしやすいです。発症後、48時間以内なら抗ウイルス薬が有効とされています。

インフルエンザの感染経路

飛沫(ひまつ)感染と接触感染があります。感染した人が咳やくしゃみをすると、ウイルスを含んだ飛沫(しぶきのこと)が飛び、この飛沫を周囲の人が鼻や口から吸いこむことにより生じる感染が飛沫感染です。インフルエンザ感染の多くは飛沫感染により生じます。ウイルスを含んだ飛沫の付着した物(例えばドアノブやスイッチなど)に手で触れて、手から口や鼻の粘膜を通して生じるのが接触感染です。

インフルエンザと肺炎

インフルエンザの流行期には、インフルエンザに引き続いて起こる細菌性肺炎がふえます。高齢者や年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ方、糖尿病や免疫機能が低下している方では、インフルエンザにかかると元の病気の増悪とともに、肺炎を起こしやすくなります。肺炎の原因となる病原体では、肺炎球菌が最も多く、肺炎球菌による肺炎は重症化することがあります。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用により、肺炎による入院や死亡の減少効果が示されています。

呼吸器感染の予防

1 ) 外出する際はマスクをし、外出後はまめにうがい・手洗いをしましょう。特に、受診時にはマスクを着用し「かからない」「うつさない」対策をしましょう。

2 ) 適温・保湿を保ち、のどの乾燥を防ぎましょう。

3 ) バランスのとれた栄養の摂取

4 ) インフルエンザワクチンの接種
インフルエンザワクチンには発症を抑えたり、重症化を予防する効果があります。特に高齢者(65歳以上)や基礎疾患のある方などはしておいた方がよいです。
ワクチン接種の効果がでるまでに2週間程度を要し、5か月程度効果が持続するとされています。流行が始まる前に接種を受けましょう。利根中央病院・とね診療所・片品診療所でもワクチン接種ができますので、ご利用ください。(参照4面)

5 ) 肺炎球菌ワクチンの接種
65歳以上の方では、市町村による定期接種が行われています。定期接種の対象となる方以外でも、呼吸器、循環器に慢性の病気のある方、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全の患者さん、摘脾を受けた方などハイリスクの方は早めに受けておいた方がよいと考えます。かかりつけ医に相談してみてください。

6 )禁煙も大事です。喫煙するとインフルエンザにかかりやすくなります。

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