あなたの腎臓は大丈夫ですか?

2022年05月01日

利根中央病院
腎臓内科科長
岡部智史

あなたの腎臓を守るためにできることがあります。その術を知っておきましょう。

慢性腎臓病とは

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)という病気をご存知でしょうか?慢性腎臓病とは、その名の通り、原因にかかわらず3ヶ月以上続く腎機能低下をきたす全ての腎臓病のことをいい、慢性腎不全とほぼ同義になります。現在日本には慢性腎臓病の患者は1300万人以上いると推計され、日本人の10人に1人以上がこの病気に罹患していることになります。

慢性腎臓病が進行することで、心筋梗塞や脳血管障害(脳卒中)などの生命に関わる病気に非常にかかりやすくなります。また、最終的には、慢性腎臓病が進んで末期腎不全に至れば、血液透析をはじめとした腎代替療法が必要になってしまいます(図1)。

腎臓の働き

はじめに、腎臓とはどんな働きをする臓器でしょうか?腎臓には複数の役割が備わっていますが、一番の大きな役割としては尿を産生することです。では、尿は何故つくられるのでしょうか?尿がつくられる意味としては、①体から出た老廃物を外に出すこと、そして②体に要らなくなった余分な水分を外に出すこと、になります。

症状と治療について

したがって、慢性腎臓病は、この尿をつくるといった役割が果たせなくなるため、老廃物や余分な水分が体に貯まってしまうことで、体のだるさや食欲不振、むくみや息切れなどといった症状を呈します。

しかし、腎臓は肝臓と同様に沈黙の臓器ですので、こういった症状は慢性腎臓病がかなり進行しない限り現れません。慢性腎臓病の初期は全くの無症状になります。もともと健康診断で尿検査異常を指摘されていたものの、無症状のために放置し、知らない間に末期腎不全まで進行しており、症状に気づいたその日から一生の血液透析(図2)が必要になるという方もしばしばみられます。また、慢性腎臓病になることで、心筋梗塞や脳血管障害などの心血管疾患に3倍なりやすくなることも分かっています。

しかし、残念ながら、現時点で慢性腎臓病の根本的な治療は存在しません。慢性腎臓病の治療として、インターネットをはじめとしてまことしやかに語られていますが、それらは信用しないほうがよいです。

慢性腎臓病にならないために

では、慢性腎臓病に対してできることといえば、①できる限り早くに発見すること(早期診断)、②それ以上に進行させないこと(進行抑制)、になります。

早期診断のためには、前述の通り、慢性腎臓病の初期では症状は現れないため、年1回の健康診断を受けることが最適な方法となります。そして、健康診断で尿検査異常(尿蛋白・尿潜血)や腎機能低下(血清クレアチニン値の上昇)、高血圧、高血糖などを指摘されたら、それを放置せずに必ずかかりつけ医を受診しましょう。

進行抑制としては、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の改善が挙げられます。つまり、減塩や禁煙、肥満や高血糖の改善です。そのほかに、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬をはじめとした降圧剤には、腎機能低下を抑え、腎臓を保護する作用が証明されている有用な薬があります。かかりつけ医に処方してもらったこれらの薬をきちんと日々内服することが、慢性腎臓病の進行抑制につながります。

参考

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