よくある上肢の痛み、しびれ①

2021年03月01日

利根中央病院
整形外科部長(副科長)
細川 高史

日常生活で心配になることが多い上肢の痛みやしびれ。
今回は、昨年当院で行われた医療講演懇談会(11月7日)でお話した内容からピックアップして説明します。痛みには侵害受容性疼痛(局所の痛み)と神経障害性疼痛(しびれを伴う神経痛)がありますので、それぞれ3・4月号にわけて紹介します。

侵害受容性疼痛

ばね指(弾発指)= いわゆる腱鞘炎

「指がかくかくする。朝こわばる。曲げるとロックしてもどらない。」
指を曲げるスジ=屈筋腱は手の平から指の腹側を走行します。掌から指にかけては、屈筋腱の走行時に腱の浮き上がりを抑える腱鞘(けんしょう)というトンネルがあります。手の使い過ぎでそこに炎症がおきると、腱鞘の肥厚と腱の肥大が起こりトンネルの通過がスムーズでなくなります。このとき通過障害をおこし腱がひっかかるのがばね指です。またひっかからなくても炎症による痛みが強い場合も同様の診断となります。

治療:1 安静
指の関節にテーピングし、屈伸をしずらくします。湿布なども使用します。
治療:2 注射
腱鞘周囲にステロイドの注射をうつと3ヶ月から半年くらいで症状がおさまることがあります。再発しない方もいます。ただし繰り返し注射をすると腱断裂することがあります。
治療:3 手術
局所麻酔できつくなった腱鞘を切開します。局所麻酔で20分くらいの日帰り手術です。毎月3-4件くらい手術しています。
ばね指
ばね指

ヘバーデン結節、ブシャール結節 = 指の変形性関節症

「指のフシが痛い。ごつごつしてきた。」
指の関節の変形です。軟骨がすり減り、フシがごつごつし、動きが悪くなります。第一関節(DIP関節)がヘバーデン結節、第二関節(PIP関節)がブシャール結節といいます。まれに腫脹部分に水ぶくれ(粘液嚢腫)ができます。

治療:1 安静
関節部分にテーピング。指用の装具。エクオールというサプリが有効な可能性があります。
治療:2 関節内注射。
治療:3 手術。
痛みが強ければヘバーデン結節は関節固定術、ブシャール結節は人工関節置換術がありますが、手術になることは多くありません。伝達麻酔か全身麻酔で行います。粘液嚢腫に対しては局所麻酔の手術で治療可能です。
へバーデン結節・ブシャール結節
へバーデン結節・ブシャール結節

母指CM関節症 = 親指基部の変形性関節症

「親指の付け根背側が痛い。蓋を開けたり、ぞうきんを絞るのが痛い」
親指の付け根、手首付近の関節(CM関節)の軟骨がすり減って痛みます。進行すると関節が亜脱臼してきて骨の出っ張りが目立ってきたり、親指がジグザグに変形してきます。

治療:1 専用の装具を装着
普段使用できない方でも、夜間だけでも使用すると効果があります
治療:2 関節内注射
治療:3 手術
大きくわけて関節固定術と、関節形成術があります。どちらも伝達麻酔か全身麻酔でおこないますが、術後1か月くらいの固定が必要です。
母指CM関節症
母指CM関節症

ドケルバン病 = 手首の親指側での腱鞘炎

「手首の親指側が、ちょっとした動きですごく痛い。」
手首の最も親指側には長母指外転筋腱、短母指伸筋腱という母指を開く2種類の腱が通過しており、同部にはやはり腱鞘(トンネル)が存在します。手の使い過ぎで同部に腱鞘炎を起こしますが、ばね指のようにひっかかることは通常ありません。母指を握って手首を小指側にまげ、同部に痛みがでれば診断がつきます。

治療:1 安静
治療:2 ステロイド注射
治療:3 手術(局所麻酔で20分ほどの日帰り手術です)
ドケルバン病
ドケルバン病

(次号へ続く)
(画像出典:日本手外科学会)

PAGE TOP