食べることを喜びに! ――入院中の食事について――

2018年07月01日

利根中央病院 栄養管理室長
林 和代

入院中の治療の一環である【病院食】は、栄養バランスがよくカロリーが計算された健康食でもあります。ですが、【病院食】というと「味が薄くておいしくない」というイメージがある方もいるのではないでしょうか?
当院の栄養管理室では、患者一人ひとりに適切な栄養が摂れることはもちろん、病態に合わせて食べやすいように調理を工夫し、味や見た目にもこだわり、ときには季節の行事にまつわるメニューにしたりと、食べることの喜びを感じられる食事づくりを心がけています。

安全においしく提供

食事作りは、食品の温度と時間の管理を徹底して行う衛生管理が求められます。2013年に現在のセントラルキッチンぬまたが建設され、調理後すぐに提供する「クックサーブ方式」から「クックチルシステム」(加熱調理→急速冷却→冷蔵保存→食べる直前に再加熱)での給食提供に変わり、食の安全性の確保と効率化が実現、メニューの幅が広がりました。これにより様々な治療食や個別対応食をより多く提供することができ、患者様一人ひとりにあった食事の対応ができるようになりました。
病院が新築移転した2015年9月からは、セントラルキッチンぬまたから医療生協のシンボルマークが入った自前の冷蔵車で、月~土の12時に翌日昼夕、翌々日朝分が病院に配送されます。病院では提供する直前に再加熱を行い、盛り付け・配膳を行い、食事の運搬には温かいもの・冷たいものが管理できる温冷配膳車を使用しています。
セントラルキッチンぬまたとは連携を取りながら、患者の意見や嗜好調査結果などを共有し、お互いより良い給食提供に取り組んでいます。

病態に応じた食事を

食事は治療の一環として考え、それぞれ患者の病態に応じた栄養量を考えています。そのため疾病や病気の状態によって、食事内容に違いがあります。

一般食
健康な人と同様な食事が好ましい患者に提供され、身長や年齢、嚥下の状態などを考慮して食種を選択します。常食・全粥食・分粥食・軟菜食・軟菜一口大食・きざみとろみ食・嚥下訓練食・幼児食などがあります。
特別治療食
疾患の治療に直接関与する食事で、様々な疾患に対応した栄養成分別の食事を用意しています。疾病や病気の程度によって食事内容に違いがあります。糖尿病や脂質異常症、高度肥満、痛風には【エネルギーコントロール食】、心臓病や高血圧症には【塩分コントロール食】、腎臓病には【たんぱく質・塩分・カリウムコントロール食】、膵臓病には【脂質コントロール食】、鉄欠乏性貧血には【鉄分コントロール食】、消化器潰瘍には【潰瘍食】などがあります。
また、食べることや飲み込むことがうまくできない患者に対しては、摂食嚥下のサポートをする言語聴覚士と相談し、嚥下訓練食の内容の見直しを行っています。お粥のべたつき感を改善した「ゼリー粥」を導入し好評です。
入院中食事があまり摂れない患者には、管理栄養士が聞き取りを行い、喫食状況に合わせた食事を提供します。入院した際に、食事のことについて相談がありましたらお声掛けください。

季節感じる行事食・豊富なメニューの分娩食

入院生活の中でも季節を感じて頂けるよう「行事食」を提供しています。元旦の昼食には、重箱風の弁当箱に詰めたおせち料理(写真1)を提供し、年末年始を病院で過ごす患者から「癒しとなった」との感謝の言葉を頂きました。毎回、手作りのカードも添えています。
ご出産された方には「分娩食」(写真2)を提供しています。朝食は洋食(月水金日)と和食(火木土)、昼食は和洋中の様々なランチメニューにしています。おやつは毎日病室に伺い、その日の気分に合わせて選んで頂いています。
アンケートには「バラエティー豊富なメニューで品数も多くてすごく満足です。毎食のごはんが楽しみな入院生活となりました」「二年半前にも入院した際も楽しみでしたが、前よりさらにおいしくおしゃれになったように感じます」との言葉を頂きました。

写真1 おせち料理(行事食)
写真1 おせち料理(行事食)
写真2 分娩食(洋食)
写真2 分娩食(洋食)

栄養相談

食事療法が必要な患者(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、腎疾患、がん、低栄養など)には、医師の指示に基づき、管理栄養士が実行しやすく継続できる食事の説明やアドバイスをしています。食事療法について管理栄養士からの栄養相談を希望される方は、入院中はもちろん外来でも行っていますので、かかりつけの医師または看護師にご相談ください。
入院されている患者にとって食事は唯一の楽しみでもあります。これからも安心安全、おいしい食事提供に努めていきたいと思います。

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