物忘れと認知症 ~抱えこまずに相談を~

2016年10月01日

とね在宅総合センター長
老人保健施設とね施設長
都築 靖

産科や小児科を除くほぼすべての診療科の医師に、認知症と向き合うことが求められています。認知症は、従来型の医療で対応できるような病気ではありません。だからといって、「将来、認知症になるのではないか」と過度に不安になる必要はありません。わからないことが多いと不安になるものです。認知症について、どのような病気で、どのような症状や治療があるかなど正しく知っておきましょう。

脳の機能と認知症

脳には、運動機能、知覚機能など、さまざまな機能があります。その中でも、認知機能(高次脳機能)は、私たちが目・耳・皮膚・鼻・口(舌)で得た情報を、記憶・判断・推理し、言語や行動にしています。
人の認知機能のレベルは、50代を過ぎた頃から徐々に低下していきます。(図1)高齢になると、ベータアミロイドとういう物質を分解する働きが低下し、脳にたまりやすくなります。ベータアミロイドが分解されずに脳に多くたまると、脳がダメージを受け、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態になります。これが、認知症です。

図1
図1

物忘れと認知症の違い

物忘れは、ものや人の名前が出てこなかったり、食事のメニューを忘れたりする状態のことをいいます。忘れたことの自覚がある場合は、単なる物忘れで心配はいりません。
しかし、認知症になると、食事をしたことや人と会ったこと自体を忘れてしまいます。自分が体験したこと自体を忘れてしまうのです。

早期発見が大切

認知症は一度発症してしまうと、もとに戻すことは極めて困難ですが、早期発見ができれば進行を遅らせたり、良好な状態を長く保つことができます。
そこで、健常者と認知症の中間にあたる軽度認知障害(MCI)という認知症予備軍に含まれる段階で気づくことが重要です。 (図2)

図2
図2

代表的な症状の例

  1. 外出するのが面倒。
  2. 外出時の服装に気を使わなくなった。
  3. 同じことを何回も話すことが増えてきた。
  4. 小銭での計算が面倒。お札で払うようになってきた。
  5. 手の込んだ料理をつくらなくなった。
  6. 味付けが変わったと言われる。
  7. 車をこすることが増えた。

以前とは少し違ってきているけれども、日常生活上では特に支障のない状態が軽度認知障害です。
本人や周りの人が、早期発見のために注意するようにしましょう。

認知症かもと思ったら

認知症が疑われたら、専門医またはかかりつけ医を受診して、検査を受けましょう。利根中央病院では、認知症を専門に診る物忘れ外来があります。また、最近はかかりつけ医が認知症の相談窓口になっているケースもありますので、そこで相談するのも良いでしょう。
どこに受診したらよいかわからない場合は、各市町村にある地域包括センターに相談してみましょう。

生活習慣の改善で予防

最近では、生活習慣病が認知症のリスクを高めることがわかってきました。生活習慣病を予防することは、認知症の予防にもつながります。また、脳を使った運動も効果的です。

  1. 早歩きなどの有酸素運動 1日30分程度。
  2. 軽い筋力トレーニング
  3. 食事の改善(野菜や魚などを積極的に摂る)
  4. 脳のトレーニング 週3回10分程度(歩きながらしりとり、100から3ずつ引いていくなど)
  5. 血圧管理(安静時血圧135/85mmHg)

その他にも、人とのコミュニケーションも認知症予防の効果がありますので、人と話しながら運動をするのも良いでしょう。

優しく寄り添う

私の親父も「徘徊」の常習者で、それこそ母親が3年以上、父の着物の帯を持ち、村の捜索放送を聞きながら、「徘徊」に付き合ったと申しておりました。
認知症患者は、日々自分ができることが少しずつ減っていきます。しかし、本人はしっかりしたいと思っています。そういう努力があることを忘れて、周りが厳しく接しては、さらに悪化してしまうことにつながりかねません。自分が変わっていくことの混乱、そして恐怖や悔しさなどを想像し、優しく寄り添ってあげてください。

抱えこまずに相談しよう

一方で、家族だけで支えるには限界もあります。早い段階で専門医やかかりつけ医、地域包括センター等に相談し、福祉・介護サービスを利用できるようにしましょう。
また、地域住民のみなさんから「認知症について教えてほしい」などの学習の要望があれば、くらしサポートセンター(22-2300)へご相談ください。

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