日常で発症しやすい疾患 ~ 手周辺を中心に ~

2014年08月01日

利根中央病院
整形外科医長
細川高史

ひとは常に上肢を使用しますが、特に手や指を酷使されている方も多いと思います。腱鞘炎やばね指などは整形外科医が日常で診察することの多い疾患ですが、詳しい病態がわからない方もいらっしゃるかと思います。今回は頻度の多い手周辺の上肢疾患をとりあげます。

ばね指(弾発指)=屈筋腱鞘炎

「指の曲げ伸ばしで痛い。ひっかかって元に戻らなくなる!」

病態
指を曲げるスジ=屈筋腱は前腕屈側に始まり、指の掌側を走行します。掌から指にかけては、屈筋腱の走行時に腱の浮き上がりを抑える靭帯性腱鞘というトンネルがあります。手の使い過ぎで腱と腱鞘の間に炎症がおきると、腱鞘が肥厚したり、腱が肥大したりすることでトンネルの通過がスムーズでなくなります。このとき通過障害をおこしひっかかるものがばね指です。またひっかからなくても痛みが強い場合も同様の診断となります。
治療
①安静
手の使用を控えます。関節が曲がらないように指の関節にテーピングなどをして固定することがあります。湿布なども使用します。
②注射
ステロイドの注射をうつと三ヶ月から半年くらい症状がおさまることがあります。再発しない方もいます。ただし短期間に繰り返し注射をすると腱をいためてしまいます。
③手術
局所麻酔できつくなった腱鞘を切開します。20分くらいの日帰り手術です。

ドケルバン病=手首の親指側での狭窄性腱鞘炎

「手首の親指側が、ちょっとした動きですごく痛い!」

病態
手首の最も親指側には長母指外転筋腱、短母指伸筋腱という親指を開く二種類の腱が通過しており、同部にはやはり腱鞘(トンネル)が存在します。手の使い過ぎで同部に炎症をおこすと強い痛みを生じます。ばね指のようにひっかかることは通常ありません。親指を握って手首を小指側にまげ同部に痛みがでれば診断がつきます。
治療
①安静
②ステロイド注射
③手術(局所麻酔の日帰り手術です)
ばね指とほぼ同様です。
図1 ドケルバン病
図1 ドケルバン病

手根管症候群=正中神経の圧迫による神経障害

「親指や中指がしびれる。しびれが強くて目がさめる!」

病態
正中神経と、指を曲げる九本の腱(おやゆびは一本、他指は二本ずつ計八本)は手根管といわれる手首のほぼ真ん中を通るトンネルを通過しています。加齢とともに手根管の屋根となる靭帯が肥厚したり、手の使い過ぎで腱のまわりが炎症をおこし腫れると、神経が圧迫をうけて神経障害がおこります。親指から薬指の半分までのしびれが主な症状です。小指にはしびれはおきません。また進行すると母指球(親指のつけねのふくらみ)がやせてきて、つまむ力が落ちてしまいます。診断のために、神経を電気で刺激する検査(神経伝導速度)を行うことがあります。
治療
①安静
手の使用を控えます。安静のために、寝るときに手首を固定します。ビタミン剤を内服します。
②ステロイド注射
③手術
神経を圧迫する靭帯を切離します。通常30分ほどです。入院して全身麻酔、または日帰りの伝達麻酔で行います。術後は一~二週間ほど手を包帯で固定します。
図2 手根管症候群
図2 手根管症候群

へバーデン結節=指第一関節の変形性関節症

「指の第一関節が、はれている。痛い!」

病態
指の関節にも軟骨があり、第一関節(DIP関節)の軟骨がすり減って骨が変形するものです。動きが悪くなり痛みます。腫れてゼリー状の水がたまることがあります。第2関節(PIP関節)や、付け根の関節が腫れることが多い関節リウマチとは別の病気です。
治療
①安静
湿布や塗り薬をしたり、関節にテーピングをします。
②手術
骨の出っ張りを削ったり、水のたまりを改善する手術があります。痛みが強い場合は関節固定術をおこないます。痛みはとれますが、第一関節は動かせなくなります。伝達麻酔あるいは全身麻酔で行います。

母指CM関節症=母指基部変形性関節症

「親指の背側つけねが痛い!」

病態
親指の付け根の関節(CM関節)の軟骨がすり減って、とくにつまむ動作で痛みがあります。進行すると関節がずれてきます(亜脱臼)。
治療
①安静
湿布や塗り薬
②装具
長期間装着します。
③ステロイド注射
④手術
すり減った軟骨部分の骨を削って骨を固定します。痛みはとれますが親指の動きはやや小さくなります。その他、多くの手術方法があります。伝達麻酔または全身麻酔でおこないます。
図4 母指CM関節症
図4 母指CM関節症

以上のような症状でお悩みの方は、利根中央病院整形外科 (22-2300) までご相談ください。

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