放射能汚染による食への影響 ~食の安全を守る~

2011年07月01日

利根中央病院
管理栄養士
生方利奈

東日本大震災が起こり、大津波が襲い、福島第一原子力発電所は一部壊滅し、大量の放射性物質が大気中に放出されました。その影響で土壌の放射能汚染、さらに野菜・水・魚の汚染が明らかになったため、食への不安を感じながら食材購入をされている方も多いのではないでしょうか?

放射線の健康への影響

放射線を浴びることを被曝と言います。地球上に生息する生物は全て宇宙線や自然界から放射線を受けています。原爆や今回のような原発事故から放射線が身体に照射され放射線を受けることを「外部被曝」といい。これに対して、放射線に汚染された飲み物(水やミルクなど)・食べ物(野菜、魚、肉など)から身体のなかに取り込まれて血液中に入り全身に回って臓器に沈着するのが「内部被曝」といいます。
以上の事から、今回の食品汚染は内部被曝ということになります。内部被曝は、リスク(危険性)が高く、持続的な身体への悪影響が考えられます。放射線が人体に与える影響は、放射線の種類や量・期間などによっても異なりますが、一定の線量以上を被曝すると健康被害が生じる事がわかっています。
健康被害が出ると証明されている最低値が100ミリシーベルトです。私たちは日常生活や自然界の中で一人当たり年間2.4ミリシーベルトを受けています。放射線量が増えるにつれて、発がんリスクが高くなることも判明されていますが、発がんリスクが高まるとされる最低値の100ミリシーベルト未満であれば、喫煙や食習慣などの影響が大きく、照射線の影響が判明されていないといわれています。

食品安全法の暫定規制値

食品衛生法に基づき厚生労働省が定めている基準で、汚染された食品が市場に出回らないように、健康被害が想定される数値から100分の1以下という水準。一定の飲食物を1年間取り続けた場合のヨウ素の甲状腺での線量が50ミリシーベルト、セシウムの全身の線量が5ミリシーベルトを超えないように算出された数値となっている。
たとえば、1キログラムあたり、飲料水や牛乳、乳製品、野菜や魚などは、表の規定値以上になると出荷出来ないようになっています。

食品汚染が心配な時の食べ方

空気中の放射性物質がつきやすいのは、特に葉の広い(葉が広がって表面積が大きい)野菜です。  
放射性物質は煮沸しても除去できませんが野菜の外部に付着している放射性物質は、水で洗ったり、ゆがいたり、煮たり(茹で汁は捨てる)皮や外葉をむくことで汚染の低減が見込めます。また放射性物質を含んだ牧草を食べた牛や山羊のミルクは放射性物質を含んでいるので注意しましょう。
もともと水やあらゆる食べ物には放射性物質が微量含まれていますので、数値が0ということはありません。日本人は普段も摂取した魚や野菜などからは、年間0.3ミリシーベルトを受けています。それらが健康に影響することはないといわれています。
たとえば水を1日2リットルずつ毎日飲んだとしても成人では、3.5ミリシーベルトで、魚でいえば、毎日200g食べたとしても2.3ミリシーベルトでどちらも健康に影響がでるとされている最低値の100ミリシーベルトには及ばないので、安心していいと思います。

健康的な生活が大切

医学的には、予防効果が証明されていませんが、食生活を含め健康的な生活を送っている方のほうが、放射線によって被曝したとしても回復が早いということが言えます。健康的な食生活を送るためにも1日3食しっかり食べ、身体にとって必要な水分も十分にとり、食事を楽しむことや1日の疲れた体を睡眠を通して休むようにし、心も健康にしていくことが大切です。これから暑い夏が来ますが、夏バテをしないように普段からの食生活や規則正しい生活を送りましょう。

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