歯周病と糖尿病 ~毎日のケアが大切~

2010年06月01日

利根歯科診療所
歯科医師
豊田 庸光

歯周病とは、歯の汚れ(歯垢)の中にいる歯周病原菌の感染による歯を支える周囲の組織(歯ぐきや骨などの)慢性炎症です。痛みなど自覚症状がほとんどないため、気がつかないうちに進行していまいます。歯茎の出血や腫れから始まり、放っておくとやがて歯がぐらついて抜けてしまうこともあります。

全身との関係

歯や歯ぐきの健康は口の中だけでなく全身と関係しています。口の中には何百種類という細菌が生息していますが、口から体の中に入り込むとさまざまな病気(心臓病、肺炎、糖尿病、早産等)を引き起こすことが知られています。
歯周病は歯周病菌の塊(かたまり)である歯垢(プラーク)や歯石による歯ぐきの炎症ですが、たかが口の病気とあなどってはいけません。歯周病の人が心臓病になる確立は2~3倍にあがります。

糖尿病との関係

歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれているように、糖尿病の患者は歯周病の発症や進行のリスクが2倍以上になるとアメリカの研究で報告されています。
糖尿病があると、白血球などの免疫機能が低下して細菌に感染しやすくなります。そして、体を修復する力も落ち、さらに唾液による自浄作用も弱くなります。そのため歯周病の進行が早くなります。
重度の歯周病の部位では、歯周病原菌の侵入に対して体の反応で、TNF‐αと呼ばれる悪玉物質が作られ血液中に流れ込みます。するとインスリンの働きが弱められ、血糖コントロールが悪くなります。
糖尿病の人は、口腔内を清潔にして、よく歯磨きをすることが大切です。

ケアすれば大丈夫

このようなことから、糖尿病の患者は歯周病に対する治療、予防が非常にたいせつになってきます。それでは、実際にどのようにすればよいのでしょうか。
まずは、歯科医に受診することが第一歩になります。歯科医で歯周病の検査を受けて、今の自分の口の中の状態を把握しましょう。検査の後には歯周病治療を受けることになると思いますが、治療が終わったからもう歯科医にはかからないというのではなく、治療後も定期検診・定期クリーニングをうけましょう。
また、歯科医での歯周病治療、クリーニングだけでは歯周病は予防できません。大切なのは日々のご自身による口の手入れなのです。どのように口の手入れをすればいいのかも歯科医で聞いて、適切な方法で手入れしましょう。そのためにも、まずはかかりつけ歯科医をつくりましょう。
口の手入れ(ケア)にはセルフケアとプロフェッショナルケアという二つのケアがあります。

1.セルフケア

自分で行う毎日の予防
歯ブラシやフロス(糸ようじ)歯間ブラシを使って歯垢(歯に付いた汚れ)をていねいに落としましょう。
バランスのとれた食生活。食事はよく噛み食べ過ぎを防止しましょう。
喫煙習慣は歯周病の進行を早めますので、禁煙しましょう。

2.プロフェッショナルケア

歯科医師や歯科衛生士による予防
自分にあった歯磨き方法を知りましょう。 までの治療では98%の人が成功することになります。
歯石(歯垢が石灰化して硬くなったもの)を取り、歯のクリーニングを受けましょう。
かかりつけ歯科医で定期的にチェックを受けましょう。

よく噛むことが大切

糖尿病と歯周病は、「お互いに悪い影響を及ぼす関係」と言われています。こうしたことから、糖尿病治療における歯科の関わりも必要になってきました。さらに、糖尿病治療として食事療法・運動療法・薬物療法が大きな柱となっていますが、歯科は特に食事療法と大きな関わりがあります。「よく噛んで食べましょう」と言われるように、しっかり食べられる口の健康づくりに私たち歯科の関わりがあります。歯科医療は、「食べる」「話す」という「生きる力を支援する生活医療」として関わっています。
このように、糖尿病治療の際には、歯周病との関係を通じて、また食事療法への関わりとして、歯科治療も重要です。

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