2026年10月01日
総合診療科
医員
佐藤 聖佳
日本では4~5人に1人が睡眠の悩みを持つといわれています。人間には約24時間周期の体内時計が備わっているため、長時間起きていればいずれ眠るという仕組みになっています。しかし現代では照明の普及により生活が夜型化する傾向にあり、夜遅くまでスマートフォン等の電子機器を使用する、交代勤務のために体内時計に逆らって起きているなど睡眠不足となりうる要因が増えています。NHKの国民生活時間調査によると、2020年における平日の平均睡眠時間は7時間12分であり、1960年代と比べて1時間ほど減っています。
睡眠時間の減少は働く世代に限ったことではありません。高齢者においては自然に眠りが浅くなったり,夕方に寝て未明に起きるというように睡眠時間の前倒しが生じたりします。また退職などのライフステージの変化、家族の死や自身の体調への不安などがストレス要因となり、不眠になりやすいといわれています。
睡眠不足が及ぼす影響
私たちは眠っている間に脳と身体を休ませながら記憶を整理し定着させます。最適な睡眠時間は6~8時間とされますが、睡眠時間が少ないと注意力や判断力が低下し、事故や仕事上のエラーが生じる危険性が高まります。慢性的な睡眠不足は子どもの学習や成長を妨げたり、ホルモンのバランスが乱れることで肥満、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を引き起こしたりします。自律神経機能が低下することで抑うつ、不安といった心の不調にもつながります。
規則正しい生活を
①体内時計を整える
できる限り決まった時刻に起きて朝食をとることで体内時計が整います。平日と休日とで起床時刻を大きくずらさないことも大切です。休日に遅くまで寝ていると体内時計が後ろにずれ込み、翌日に「時差ぼけ」と同じような状態になります。休日に「寝だめ」をすることは医学的にはできないといわれています。毎日必要な分だけ眠ることが重要です。
昼寝をする場合は午後3時頃までに,30分以内が目安です。長い昼寝や夕方の仮眠は夜の寝つきを悪くしたり眠りを浅くしたりして、翌日また眠くなるという悪循環につながります。日中の運動は睡眠に効果的とされていますが、寝る直前に激しい運動をすると身体が活動モードになってしまうため避けましょう。睡眠の改善に適した運動方法は現在明らかになっていません。買い物や掃除などの活動を含めて,一日の活動量を無理なく保つことが大切です。
②寝る前にリラックスを
夜になると眠りを促すメラトニンというホルモンが分泌されます。スマートフォンやテレビなどの強い光を寝る直前まで浴びるとメラトニンの分泌が抑えられ、体内時計が後ろにずれ込み寝つきが悪くなります。布団に入ったらスマートフォンを見ない、夜は明るい照明を避けるといった工夫も効果的です.眠くないのに無理に眠ろうとするとかえって緊張して眠りから遠ざかるため、寝床から出て音楽を聴いたりストレッチをしたりしてリラックスしてから寝床につくようにしてみましょう。入眠時刻が遅れても起床時刻を一定に保つことで、入眠時刻もやがて安定していきます。
寝る直前の熱いお風呂は寝つきを悪くする可能性があります。少しぬるめの湯で,就寝の1~2時間前には入浴を済ませるように心がけてみましょう。夕方以降のカフェイン摂取、夜食の食べ過ぎや寝酒も寝つきを悪くしたり、夜中に目覚めたりする原因となります。
おわりに
ここまでにお話しした事を一度に始めるのは大変ですし、効果的なリラクゼーション法は一人ひとり異なります。ご自身に合った方法を取り入れながら,自然で質の良い睡眠をとることが大切です。
ただし、生活を工夫してもなかなか改善しない場合には、激しいいびきや呼吸停止が起こる「閉塞性睡眠時無呼吸」や、脚の不快感で寝つけない「むずむず脚症候群」などの疾患が隠れている可能性があります。睡眠について不安や気になることがある方はご相談ください。
参考資料
NHK 放送文化研究所:2020 年国民生活時間調査
厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
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