膵臓(すいぞう)の役割と病気について ――健康診断で早期発見を――

2018年12月01日

利根中央病院
消化器内科医長
山田 俊哉

「膵臓」は消化器の一部ですが、食道、胃や大腸などに比べるとあまり馴染みがないかもしれません。しかし、人が生きる上で非常に大事な役割を担います。今回、膵臓の役割、病気とその予防法と早期発見についてお話をしていきます。

膵臓の役割

膵臓とはお腹の真ん中のやや背中側で、胃の後ろ側に位置します(図1)。血糖値を調節するインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する内分泌機能と、十二指腸へ消化酵素を分泌し、食べ物を消化させる外分泌機能の働きを担っています。

図1
図1

膵臓の病気

膵臓の病気には膵炎、膵臓癌、糖尿病などがあります。
膵臓がアルコールや胆石などで膵臓が炎症を起こし、みぞおちや背中に激痛が生じる急性膵炎と、急性膵炎が繰り返され、膵臓が線維化を生じ機能が働かなくなり、糖尿病が悪化したり消化ができなくなる症状を生じる慢性膵炎に分けられます。急性膵炎の場合には入院の上、禁食・点滴などで治療を行っていきますが、お腹全体に炎症が広がると重症膵炎と言う命に関わる重篤な状態になることがあります。
膵臓癌は日本人の癌による死因の第4位であり、みぞおちの痛み、背中の痛み、体重減少、黄疸(体、特に白目の部分が黄色くなる)、糖尿病の急な悪化などの症状で始まりますが、初期には無症状のことが多く、早期発見が難しく、発見された時点で8割が進行癌で手術が不可能だと言われています。血液検査やエコー、CT、MRIなどの検査で疑い、特殊な内視鏡検査である、内視鏡的膵胆管逆行性造影検査(ERCP)や超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUSFNA)で癌の組織をとって診断をつけていきます。診断された時点での進行度に応じて、手術・化学療法(抗癌剤)・放射線治療などを行っていきますが、早期の段階で見つかれば見つかるほど予後も良くなってきます。

膵炎の予防のためには

大量飲酒が原因として最も多いので大量飲酒は控え暴飲暴食に気を付けること、禁煙をしていただくことが膵炎の予防につながります。純アルコール量40g(ビール換算1L、日本酒換算2合など)で膵炎発症リスクが2.5倍に、100g以上で5.4倍になると言われています。特にアルコールが原因の膵炎を起こした方が飲酒を続けると、先ほどの慢性膵炎の状態になっていくので必ず禁酒が必要となります。
またみぞおちの痛み、背中の痛みなどの症状が生じ、自宅で我慢してしまうと膵炎がさらに悪化していく可能性があるので、そのような症状を生じる場合には早めに医療機関を受診しましょう。

膵臓癌の早期発見のためには

膵臓癌は胃癌や大腸癌などと異なり、内視鏡などで直接みることができません。そのため、早期発見が難しいと言われています。
実際にはみぞおちの痛み、背中の痛み、体重減少、黄疸、糖尿病の悪化などで画像検査を行って発見されることが多いですが、ドックなどでの腹部エコー検査で無症状のうちに発見されることもあります。
近年、膵臓にのう胞(水ぶくれのようなもの)がある人は膵臓癌ができやすいと言われており、定期的な画像検査で早期発見ができうると言われていますのでかかりつけ医に相談して下さい。また、近親者に膵炎や膵臓癌の方が多くいたり、糖尿病、肥満、喫煙、大量飲酒、慢性膵炎は膵臓癌のリスクファクターと言われているので注意が必要です。
膵臓癌は怖い病気かと思われますが、早期発見できれば決してそうとは限りません。健康的で規則正しい生活、ヘルシーな食生活を心がけ、定期的に健康診断(特にドックなどでの腹部エコー検査が大事です!)を受けていただき、前述した症状があれば我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。

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