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外科領域における最新の治療 鏡視下手術とERASプロトコール
本稿は、2007年利根中央病院における症例検討会の講演内容をまとめたものです。)

利根中央病院・外科  郡 隆之
近年、外科領域では手術療法が大幅に進歩してきました。当院で現在力を入れている以下の2領域について解説します。
1. 手術侵襲の軽減:鏡視下手術の広がり
2. 侵襲に伴う全身状態の変化(ストレス反応)を最小限に抑え、合併症発症を軽減する管理方法の確立:ERASプロトコール
1.手術侵襲の軽減:鏡視下手術の広がり
手術という侵襲行為によって、各種ストレスホルモンが誘発され蛋白異化がおこります。手術侵襲を最小限にとどめることで術後のストレスは軽減されます。手術侵襲の軽減化としては、(1)早期癌に対しての内視鏡手術、(2)鏡視下手術、(3)開腹・開胸手術時の切除範囲の縮小などが挙げられます。また、開腹手術の場合創をより小さく、可能であれば横切開にすることで疼痛を減らし侵襲が軽減されます。鏡視下手術は良性疾患が中心でしたが、2006年度から消化器癌に対して鏡視下手術が保険適応となり、胃・大腸癌を中心に内視鏡手術や鏡視下手術の適応が広がってきています。当院では肺癌・胃癌・結腸癌に対して鏡視下手術を行なっています。
肺癌の鏡視下手術(VATS:video assisted thoracic surgery)
当院では2003年から肺癌の鏡視下手術を行なっております。当初は12cmほどの傷でしたが、現在は7cm程度まで短縮しています。癌は周辺のリンパ節へ転移することがあるため、手術では癌のある臓器に加えて周辺のリンパ節を合わせて切除(郭清)します。鏡視下手術ではリンパ節郭清が不十分であると学会で議論されているため、通常開胸と同等なリンパ節廓清ができる工夫をしております。
肺癌の鏡視下手術の映像はこちら
2.侵襲に伴うストレス反応を最小限に抑え、合併症発症を軽減する管理方法の確立:ERASプロトコール
ストレス反応は手術術式のみで決まるものではありません。周術期の管理方法でも左右されることが近年判明してきました。ストレス反応を軽減し、包括的に合併症を減らす手法がERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコールです。ERASプロトコールは、手術における安全性向上、術後合併症の軽減、早期回復、術後在院日数の短縮、コスト低減を目的に開発された周術期管理の包括的プロトコールです。その基本概念は手術後の回復を促進し早期に通常の状態に戻すことにあり、手術の侵襲を最小限にする術式の選択、早期経口摂取の促進と静脈栄養の早期中止、早期離床、十分な疼痛管理を中心とした総合的な管理を行うことにあります。結腸癌手術に対するERASプロトコールは欧州静脈経腸栄養学会で多施設共同研究結果が報告されて、その効果が示されました。

従来は、
(1) 腸管切開時の便排出による汚染を防ぐとともに手術をしやすくするため、前日から絶食あるいは流動食にして腸管を空虚にする
(1) 当日は麻酔導入時の誤嚥予防のため絶飲食する
(1) 術後数日は異化亢進期のため、積極的な栄養療法は行わない
4. 排ガスが確認されて、かつ吻合部が安全に使用されるまで経口摂取を控える
ことが推奨されていました。そのため、消化管術後では1週間前後で経口摂取が開始されていました。

ERASプロトコールの栄養療法の特徴は、(1)周術期に絶飲食をしないことと、(2)静脈栄養は第1病日から積極的に中止することであり、従来の消化管手術周術期の栄養療法の基本概念と全く相反しています。

当院では2005年よりERASプロトコールを胃癌・大腸癌手術患者を中心に開始し、在院日数の短縮を認めております。ERASプロトコールの有用性について2006年日本静脈経腸栄養学会において本邦で初めて学会報告しました(図1、2、3)




しかし、早期経口摂取を行うためには腸管が安全に使用できることが必要です。ERASプロトコールの中核をなす早期経口摂取が普及してきた背景には、術後消化管機能回復時期の研究が進んだことと、手術手技が向上し消化管吻合部の縫合不全が減少してきたことが挙げられます。

当院では、2004年から胃切除に対して器械吻合を開始するなど手術手技の安定化に努めてきました。図4のように、閉鎖ドレーンと器械吻合を併用することで胃癌術後の発熱が減少し、術後在院日数は大幅に短縮しました。また、当院では2003年12月からNST(Nutrition support team)を外科病棟で開始しており、手術患者に対して適切な栄養療法が検討されていました。そのためERASプロトコールは受け入れやすい状況でした。
術後のリスクを減らす総合的管理
ERASプロトコールを安全に行なうためには、術後のリスクを減らす総合的管理体制が必要です。当院ではリスクを減らす3つの鼎として、(1)適切な栄養療法、(2)感染対策、(3)基礎体力の維持を重視してきました(図5)。この3つはお互いに関連しており、どれか問題を起こすと残りの部分にも影響を及ぼします。例えば、感染症を起こすと体力の低下、栄養状態の低下を引き起こしますし、体力が落ちれば、栄養状態も悪化し免疫力が低下し感染症になりやすくなります。そのため、(1)NSTによる適切な栄養療法、(2)周術期の感染対策、(3)廃用萎縮予防のため術後早期からの理学療法をシステム化し積極的に行なっております。
まとめ
当科では術式および術後管理の低侵襲化に心がけております。癌患者の待機手術症例の安全性は経年的に高まっており、在院日数も大幅に短縮しています。
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